「牙の折れた星野仙一氏を見て」

最近、日本テレビの「ニュースZERO」でコメンテーターや野球解説をしている星野仙一氏を見ているとかつての強気な姿勢や向かっていく闘志は全く陰を潜めてしまった。「牙の折れた虎」という表現が相応しいのではないだろうか。また、彼が常勝軍団に育てた阪神タイガースも今や「駄目虎」のレッテルを貼られている。先日、阪神の士気を上げるべく、阪神シニア・ディレクターの立場から叱咤激励をしたという。しかし、選手たちは、聞く耳など持たないようであった。
一連の星野氏を見ているとやはり、オリンピックでの敗戦が尾を引いているのではないだろうか。オリンピック敗戦の世論は、恐ろしいまでの星野批判が横行していた。星野さんの娘さんも当時、連日の嫌がらせ電話などで心を痛め体調を崩して入院、孫は学校でイジメの対象になっていたという。星野氏は、自分の不甲斐無さを憎み、悔しさで一杯だったという。最近では、先述の「ニュースZERO」でもコメントは控え目で、時折、苦笑いを浮かべていることが多いと感じる。そんな姿を見ていると私もなんだか自分のことのように悔しい気持ちで一杯になる。
それは、彼が監督として奮闘している姿や日頃から選手に言っている闘うことや一歩、踏み出す勇気、時には変えることなどたくさんの勇気、何より困難に立ち向かっていくことの大切さを教えてくれたからである。失敗しても挫けず、叩かれて批判されても負けない心で一途に挑んでいき、それに打ち勝つのが星野仙一氏のスタイルであり、「闘将」と言われる所以だと思う。是非、今一度、色んなことに挑戦して人生の花道をつくってほしいと感じる。かたやポスト真弓氏の席を静かに狙っているとも報じられている。失敗やあるいは世論というのは、実に恐ろしい。こんなにも人を変えてしまうのだろうか。確かにトラウマや心の傷を負うと強気になれないということは私もよくわかっている。また、この一件で感じたことは、人間とは都合の良い生き物であるということだ。オリンピックに挑む前は、あれだけ盛大にエールを贈り、敗者となった時には、冷やかな態度・軽蔑・誹謗・中傷などしかない。
たくさんの勇気と希望、大切な心や人間としての本道を教えてくれた人だからこそ輝かしい人生で終わってほしいと願うばかりである。
何より私達は、失敗した人達を貶したり、嘲笑するのではなく、また立ち上がれるような心温かなエールを贈ってあげることこそ人間として大切であると思う。

L'âge d'or /円谷尚智