「北京バイオリンについて」

私は、中国ドラマの「北京バイオリン」という作品が好きである。かつて、BSのNHKで放送しており、今は民放のNHKで放送している。
しかし、物語が淡々と描かれているところが強いため視聴率はいまひとつ伸びない。テーマは「親(父親)が子に捧げる無償の愛」である。物語はリュウ・チェンという人物が若い頃は、荒れた生活を送っており、物事の分別もわからない「ならず者」であったところから始まる。濡れ衣を着せられ、刑務所に入り出所後、ある女性が自殺をするという事件に遭遇し、その女性の残した子供を拾い、北京を出て物心がつく年まで育てた。その子供は「リュウ・シャオチュン」と名づけられ、バイオリンの才能に秀でていた。物語の中心は北京で開かれる音楽コンクールを取り巻いて展開される。そこには、息子の将来のために、なりふりかまわず、愚直なまでに子を想う父の姿がある。物事の筋・道理を通し、それを息子に教え諭す。シャオチュンも最初は、色々なことに反発していたが、徐々に親の愛というものを理解していく心の変化が描かれている。物語が展開していくにつれ、リュウ・チェンが本当の父でないこともわかってしまうが、シャオチュンにとっての父は、他の誰でもなく、育ての親リュウ・チェン以外に他ならないのである。ここまではどこにでもあるありふれた物語である。さておいて、北京バイオリンとは何なのか?何の象徴なのだろうか?ある時、シャオチュンは母の形見のバイオリンを売ってしまい、リュウ・チェンはかってない程、激怒した。「それは、母の形見であり、お前の生きる根っこなんだぞ」と教え諭すシーンがある。
つまり、バイオリンがシャオチュン自身の「生の証」であり、その象徴なのである。バイオリンを通じて、親は、子に無償の愛を捧げ、その愛を受けて、子は子供から大人へ成長していく。そして、この親と子の絆を結ぶ「橋」がバイオリンなのである。この作品が訴えたいことは、形は様々だが親は誰しも子に無償の愛を捧げており、親子の絆というのはかけがえのない尊いものであるということではないだろうか。また、一見ありがちなストーリーだが、近年ではなかなかない奥深さを持ったドラマであると私は思う。このドラマを観て、親が自分にどれだけ深い愛情を注いで、育ててくれたかを改めて気付かされた作品です。

L'âge d'or /円谷尚智