「広島カープ~緒方選手 現役引退~」

 広島カープ緒方選手の引退試合のダイジェストがテレビで放映されていた。チームメイトの後輩達から労いの言葉を受けるとともに若い選手達の模範となり如何に真摯に練習して歩んできたかが窺えた。
私は、彼の通算成績を見たとき241本という本塁打数に目がいった。彼のように体格が比較的小柄で恵まれていなくてもこれだけ本塁打を残したことの裏には、人の見えないところで人一倍多くの練習を積んできたのではないだろうか。思えば、彼は9年目にしてやっとレギュラーを掴んだ遅咲きの野球選手である。人に言えないような苦労を重ねて掴んだ栄光である。練習に練習をして「練習の鬼」とまで言われた所以である。
怪我に泣かされ、それでも体を調整していたが既に年齢は40歳を迎えていた。出場機会も減り現役引退を決意した。
試合は、巨人との一戦であった。8回から守備につき元チームメイトの木村選手は、まるで狙ったかのように緒方の守るセンターにフライを飛ばした。そこには木村選手からの「ご苦労様」という思いが込められ、言葉を越えた選手同士の心のキャッチボールがなされていた。
打席でもスリーベースを放ち、スライディングでセーフになった。次の瞬間、巨人バッテリーは、悪送球で緒方がホームまで駆け込んだが敢え無くアウトとなった。ここに現役としての緒方の野球人生に幕が下りた。
引退セレモニーでは、「ユニフォームが真っ黒になるように全力でプレーすることを心がけてきましたが、いつしかそれも出来なくなり自分の思うようなプレーをすることが出来なくなり引退を決意しました。怪我の多かった野球人生でしたが、家族の支え、チームメイトの支え、そしてファンの皆さんの支えられて築いた野球人生です。」と述べる姿を見て私は目頭が熱くなっていた。そして、溢れんばかりの万感の想いを込めた温かな拍手が緒方を包んだ。前田選手も花束を渡し、お互い抱擁した。前田選手も同じような怪我に泣かされた悔しさがわかるだけに熱い涙がそこにあった。家族が寄り添った時に緒方選手も普通の親の顔に戻り、朗らかな笑顔を浮かべていたのが印象的である。
家族というのは共に悩み、乗り越えていき、そして幸せを分かち合う素晴らしいものだと思った。また、チームメイトとは互いに鼓舞し合い、切磋琢磨していき、ファンの温かい声援があってこそ野球選手というものが成り立つものだと改めて感じた。
彼の猛練習によって築いた成績を見ればどんなに体格が恵まれていなくとも人一倍多くの練習を積んでいけばレギュラーも取れると同時に、本塁打もある程度、残せるとういうことである。つまり、練習は嘘をつかないということである。
これは私達の日々の勉強や学問、社会においても同じことが言えるのではないだろうか。どんな困難や不運、ハンデがあっても弛まぬ努力と一途な情熱を持ち精進していくことでいつしかそれは大きな才能という大輪の花を開花させるのではないだろうか。
緒方選手は、今回、野球でそれを私達に示すと同時にまさに野球選手の模範であった。緒方選手、お疲れ様でした。

L'âge d'or /円谷尚智