「経済不況における中小企業への期待~中小企業の抱える問題と政策・支援体制を通じて~」

 

 戦争における大きな喪失感の後に、「米ソの冷戦」が崩壊して以来、専ら自由競争社会の資本主義(民主主義)が主流を成していった。

同時に情報・通信技術が目覚ましい発展を遂げる一方で、世界規模の経済化と経済市場のグローバリゼーションへの変革が強く求められていた。日本は、高度成長を遂げ、大量生産、大量消費の産業構造を創り出していった。しかし、90年代のバブル経済の崩壊によって国の経済力は激しく落ち込み、所謂、「失われた10年」において、経済構造の深刻な問題に直面したのである。この大不況により日本型経営と呼ばれる終身雇用制、年功序列制賃金、株式の相互持ち合い、企業間の長期継続取引、企業別組合制度、下請・孫請及び系列制などが崩壊の一途を辿った。さらには、企業の開業率を倒産率が上回るという事態にまで及ぶ結果となったのである。また、今日では、企業も含め日本は海外からの経済影響を如実に受けている。これは、資本主義が世界規模のグローバル・スタンダードを掲げるようになって以来、急速な国際化により多国籍企業が国境を越えて合併・買収・提携などの資本連携を形成していったことで海外不況等の被害や波及を一段と受けるに至った経緯がある。また、現代の国際化には、膨大な情報量が瞬時にして国境を飛び交う第三の革命とも言うべき「情報革命」が背景としてある。

日本は、米・欧などを軸とした多国籍企業の形成という世界独占体制を築くことによって、確かに従来より幅や規模(市場や経済)は拡大したが、一方では、海外の悪循環による経済不況の被害も否めず、国の経済体制・産業構造を揺るがしている昨今、その見直しを迫られているのも明白な事実である。

近年、日本のみならず各国において、このような世界経済の動揺と不安定性の逼迫に対して、中小企業の発展・役割が自国経済の活性化の原動力になることへの大きな期待が寄せられている。今日の日本では、連日の如く中小企業の倒産・破綻が相次いでいるが、中小企業が最も多く企業数の割合を占めているので、「中小企業の発展」が国の経済を活性化させることにより、全体的な経済力及び経済水準の底上げに繋がることは自明の理である。

また、国際機関のILO(国際労働機関)、UNIDO(国連工業開発機関)、OECD(経済協力開発機構)、UNCTAD(国連貿易開発)やあるいはEU(欧州連合)及びASEAN(東南アジア諸国連合)に至るまでが挙って中小企業の重要性を強く提唱し、急速的な発展・育成を希求している。

世界では、グローバル経済の大きな枠組みにおいて、中小企業の存在意義あるいは急速的な成長・発展というテーマは世界各国とも共通している。一方で、新たな中小企業への政策・施策の体制創りや編成・改編など多岐に渡る課題も山積みである。

しかしながら、各国における期待の観点や政策の展開における違いは実に様々である。そこには中小企業への定義付け・範囲・観点・理念・目標さらにはその国々における特有の風土といった多種多様な要素の差異が介在するからである。

従って、このように各国の経済体制及び産業構造における環境の中で生じる差異の多様性と共に時代の趨勢が中小企業の担う役割を様々に変化させていくのである。

ところで、中小企業とは、総じて多様性と多角的な要素を併せ持っている。それ故に発展・進展の期待の反面、様々な問題が生じる二つながらの側面がある。

中小企業が抱える問題とは、今日の多国籍企業が多く存在するグローバル世界経済が中小企業に対して新しい構造的問題を生み出していることや大企業とは、諸条件や環境面及び会社の資本力等に大きな違いがありながらも同様な位置づけでグローバルな経済体制への対応・順応を余儀なくされていることなどが挙げられる。

これらの問題に直面した時に日本のみならず諸各国は、一体、何をするべきだろうか。それは、中小企業の問題点を分析・比較検討をしながらその原因・起因を明確に打ち出すことにある。周知のように中小企業は、安定性こそ無いが、時として中堅企業・大企業に成長及び発展することもある。また、零細企業であっても業績に優れている企業は数多ある。

それ故に、中小企業の問題を明確に分析して、それに対する政策・施策を展開して国家単位で強力に支援していく体制創りをすることこそが肝要である。日本で言えば、銀行の貸し渋りの解消、国の補助金制度、その他資金援助、資産運用支援など抜本的な中小企業を支える支援体制が必要なのである。

中小企業の未知なる成長や発展に期待を寄せながら様々な支援体制の下で最大限運用していけば、自国経済の活性化にも繋がり、全体的な景気の底上げの一助あるいは豊かな日本経済再建の鍵にも成り得るはずである。

また、中小企業という草の根を強化して確固とした礎を築けばこそ不況の時でさえ大崩れしない強固な日本経済基盤を確立できるのではないだろうか。

L'âge d'or /円谷尚智